後期研修 研修プログラム

1.プログラムの概要・特徴

社会的に乳癌に対する認識や要請が高まっている現在、乳腺外科医には乳腺疾患に対する幅広い知識と技術を求められる。乳がん検診から始まり、画像ならびに細胞・組織学的診断、化学療法、内分泌療法、分子標的治療などの薬物療法、再発時の治療ならびにケア、緩和医療などの実践も求められている。この分野での後期研修は臨床腫瘍学のすべてを研修でき、全人的な医療者として患者と関わることの重要性を認識できる。

本研修プログラムでは、乳腺・内分泌外科医として必要な知識と技術の修得に加えて、新しい治療法確立のための臨床研究、基礎的研究に参加できる。3年のプログラム終了時には、日本外科学会の専門医受験資格を取得できる。5年のプログラム終了時には、日本乳癌学会の乳腺専門医、日本癌治療学会のがん治療専門医、日本がん治療認定医機構の定めるがん治療認定医などの受験資格を取得できる。

2.研修の目標

日本乳癌学会の定める乳腺専門医(外科系)を取得するには、現在のところ基本となる日本外科学会専門医取得が必須である。以下は主にその目標について述べる。

(A) 一般目標

後期研修プログラムの期間に乳腺専門医として、検診、診断技術、手術、全身薬物療法、緩和医療など、多岐に渡る乳腺診療に必要な臨床経験、知識を身につける。

さらに、乳腺専門医として必須である日本外科学会専門医を5年次終了時、日本乳癌学会専門医を7年次終了時に受験資格を取得することを目指す。さらにがん治療医として臨床腫瘍学会の薬物療法専門医、日本がん治療認定医機構のがん治療認定医の資格取得を目指す。

(B) 行動目標

到達目標1:乳腺外科医として必要な下記の基本的知識を習熟し、臨床に即した対応ができる。

  1. 解剖
  2. 乳腺の生理とホルモン環境
  3. 疫学
  4. 病理(乳腺良性疾患、悪性疾患)
  5. バイオロジー(乳癌の自然史、増殖・進展、癌関連因子など)
  6. 検診(乳癌集団検診、自己検診法)

到達目標2:乳腺外科診療に必要な検査・処置・麻酔手技に習熟し、EBMに基づいた診療を行うことができる。

  1. 診断
    (1)マンモグラフィ:画像評価および読影ができる。
    (2)乳房超音波検査、乳管造影、MRマンモグラフィ、乳腺CT、胸部CT、上腹部CT、腹部超音波検査、骨シンチグラフィ、頭部CT、頭部MRIなどの適応を決定し、読影することができる。
    (3)上記画像診断の各種検査法の特性を理解して検査計画を作り、総合診断ができる。
    (4)擦過細胞診・穿刺吸引細胞診、針生検、吸引式組織生検(マンモトーム)、外科的生検:適応を決定し、結果を理解することができる。
    (5)センチネルリンパ節生検の実施方法と意義を理解している。
  2. 治療
    (1)診断結果に基づいた適切な治療方針を決定することができる。
    (2)乳癌に対する外科治療、放射線治療、化学療法および内分泌療法の役割を理解し、それぞれの適応を決定することができる。
    (3)緩和医療の内容を理解し、適応を決定することができる。
    (4)乳癌根治術後リハビリテーションの意義を理解している。
  3. 医療倫理など
    (1)最新のエビデンスを検索し、その結果を臨床応用できる。(EBMの実践)
    (2)患者側に診療方針選択の権利があることを理解し、適切なインフォームド・コンセントを得ることができる。
    (3)セカンドオピニオンに対し適切な説明を行うことができる。
    (4)臨床試験の意義を理解し、参加することができる。

3.研修期間・研修スケジュール

(1)研修期間 

卒後3年次から5年次までに外科専門医取得研修と7年次までの5年間の乳腺専門医取得研修とがある。

最初の3年間は主に大学病院(消化器外科、呼吸器外科、小児外科、心臓血管外科など他分野での研修含む)あるいは関連施設での研修を行い、日本外科学会の専門医の受験資格を得る。

さらに6年次7年次は、乳癌学会認定施設もしくは関連施設での修練を積み、日本乳癌学会、日本がん治療認定医機構、日本臨床腫瘍学会の認める専門医修得を目指す。

この間に医学博士号修得を目指した大学院進学、あるいは学位修得後の海外留学なども各人の希望により可能である。

(2)研修スケジュール

日本外科学会、日本乳癌学会、日本癌治療学会に未入会の場合は入会し、各学会の専門医取得に向けてのスケジュールを組む。初年度に各学会に入会することが必須である。

3年次(大学病院、西部病院、ブレスト&イメージングセンター)
他分野の外科ローテートにより主に日本外科学会専門医取得に向けての手術経験を積む。専門領域では、病棟勤務(術前、術後管理、化学療法、緩和医療など)および診断(マンモグラフィ読影、乳腺超音波検査、穿刺吸引細胞診、針生検、マンモトーム生検)を専門医の指導のもと行う。院内カンファレンス(術前、術後、再発例)でのプレゼンテーションを行う。症例報告を中心とした学会発表や論文作成を行う。

4年次(大学病院、西部病院、ブレスト・イメージングセンター)
引き続き、これまでの病棟外来業務に加え、乳腺手術を術者として30例以上、助手として30例以上行う。マンモグラフィ精度管理中央委員会認定の読影資格を取得する。

5年次(大学病院、西部病院、ブレスト&イメージングセンター)
引き続き、これまでの病棟外来業務に加え、外来診療(初診患者診察、外来化学療法など)を行う。また、乳腺手術を術者として30例以上、助手として40例以上行う。終了時に、外科専門医受験資格を得る。5年次までに全国学会発表を5件以上、英語論文を2編以上作成することを目標とする。

6年次(大学病院、西部病院、ブレスト&イメージングセンター)
引き続き、これまでの病棟外来業務および外来診療を行う。また、チーム医療の中核として、他業種および他診療科との連携をとり、前年度以上の症例経験を積む。臨床試験に積極的に参加する。年間に全国学会発表を3件以上、海外学会発表を1件、英語論文を2編以上発表する。日本乳癌学会認定医の受験資格を得る。

7年時(大学病院、西部病院、ブレスト&イメージングセンター)
これまでの業務に加え、専門医を目指す1~4年目医師の全般的指導を行う。前年度以上の症例経験、研究業績を積み、臨床試験に積極的に参加する。大学院進学者は学位修得に向けて準備する。このカリキュラムが終了すれば日本乳癌学会乳腺専門医の受験資格を得ることができる。

4.研修実施責任者

乳腺・内分泌外科 主任教授 津川浩一郎

5.研修指導責任者

乳腺疾患

大学

乳腺・内分泌外科 主任教授 津川浩一郎

ブレスト&イメージングセンター

乳腺・内分泌外科 教授 川本久紀

多摩病院

乳腺・内分泌外科 講師 志茂彩華

甲状腺疾患

大学

乳腺・内分泌外科 准教授 西川徹

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