内分泌外科について
内分泌外科について(甲状腺・副甲状腺疾患)
当科は神奈川県川崎市北部地域を中心として、近接する東京都、横浜市北部エリアの患者様を含めて高度な内分泌領域診療を提供するべく、1999年に旧第1外科、第2外科が統合し臓器別診療科として乳腺・内分泌外科が新たに開設されました。
乳腺・内分泌外科が開設されて以降は、乳腺外科領域では国内でも有数な手術件数を誇り、乳腺診療の代表的な施設となってきました。内分泌外科領域では主に甲状腺・副甲状腺疾患の外科的治療を担当し、代謝・内分泌内科と協力しながら診療を行っております。副腎疾患は腎泌尿器外科、下垂体疾患は脳神経外科が担当しております。
2015年4月より2020年12月までは、内分泌外科専門医が非常勤となり、月一回の専門外来のみであったために手術はほぼ行われておりませんでした。2021年1月より内分泌外科専門医があらためて常勤医となったため、院内外からの紹介が増加し、手術も少しずつではありますが増加傾向です。また、2021年4月より大学病院内分泌疾患センターが開設され、放射線治療科を含めて代謝・内分泌内科、腎泌尿器外科、脳神経外科が独立した診療ではなく、センター内にて横の繋がりを更に強化し、内分泌疾患の総合的診断・治療・研究・教育を行っております。
対象疾患
甲状腺腫瘍 | 腺腫様甲状腺腫・濾胞性腫瘍・乳頭癌・濾胞癌・髄様癌、未分化癌、甲状腺原発リンパ腫など |
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甲状腺中毒症 | バセドウ病・機能性甲状腺結節(プランマー病)など |
甲状腺機能低下症 | 橋本病、手術後など |
副甲状腺機能性疾患 | 原発性副甲状腺機能亢進症など |
診断・治療について
甲状腺腫瘍においては院内超音波センターにて専門検査技師による詳細な頚部超音波検査を行っております。診断においては日本乳腺甲状腺超音波医学会における診断基準を参考にして精査対象と判断された後に、穿刺吸引細胞診での診断を行っております。良性診断であっても経過観察が必要であり、定期的な病状評価を慎重に行っており、増大傾向時には手術療法を行っております。血液検査では甲状腺ホルモン検査(TSH,FT3,FT4)およびサイログロブリン値は受診当日にも評価可能です。手術は安全・確実をモットーに専門医、指導医が必ず立ち会います。手術合併症削減のために超音波凝固切開装置、神経刺激装置などの先端医療機器を積極的に導入し、患者様に優しい手術を心がけております。
副甲状腺機能疾患においては院内超音波センターにて専門検査技師による詳細な頚部超音波検査、画像診断センターでの核医学検査を中心に診断しております。また、近年では造影CT検査での副甲状腺腫瘍の局在診断を積極的に取り入れており、より確実な診断を行っております。内分泌内科において各種ホルモン検査、多発内分泌腫瘍症候群の有無などが精査され、当科へ紹介いただく流れができております。2021年より副甲状腺腫瘍の局在診断に対して、患者様への医療負担を少しでも減らすことを目標に、頚部単純MRI検査を導入し、当院附属施設であるブレスト&イメージングセンターと協力しながら腫瘍局在診断を積極的に導入しております。
手術について
入院は手術前日の入院を基本としています。そのために外来にて入院前までに麻酔科(術前外来)での診察を受けていただきます。
甲状腺片葉切除術では術後約3日目、甲状腺全摘術では術後約5〜6日目に退院となります。副甲状腺腫瘍摘出では術後約3日目に退院となります。
当科では鏡視下手術は行っておりませんが、日本内分泌外科学会鏡視下手術ワーキンググループに属しております。今後、新に導入を進めて行く予定です。
甲状腺・副甲状腺手術は頚部に創が残りますので、なるべく最小限の切開にするように心がけるとともに、合併症を最小限に抑えるために超音波凝固切開装置や神経刺激装置を積極的に導入し安全且つ確実な手術を提供しております。
副甲状腺手術では、術中に迅速病理検査および迅速副甲状腺ホルモン検査を提出します。それにより病変部の確実な摘出を確認してから手術を終了します。
手術後治療について
甲状腺がんに対して全摘術後の患者さんで腫瘍径が大きい、頸部リンパ節転移数が多い、腫瘍が周囲組織へ浸潤しているなど、将来の再発リスクが高いと判断される所見がある場合には、術後内照射療法(アイソトープ治療)を外来通院にて行っております。当院では放射線治療科の専門外来を受診いただき治療を受けていただきます。
病診連携について
当科では院内外より精査対象となる患者様をご紹介いただき、治療の適応を判断します。経過観察、手術などにより治療が一旦安定した際には、ご紹介いただきました医療機関や甲状腺疾患診療が可能な御施設へ逆紹介や新規紹介させていただきます。特に悪性腫瘍術後の患者さんには長期的な関わりが必要となりますので、二人主治医制を基本に近隣施設との積極的な病診連携構築に努めていきたいと考えております。
担当医師について
西川徹(准教授)
専門:甲状腺腫瘍、副甲状腺腫瘍の外科的治療、副甲状腺腫瘍の非侵襲的検査など
当教室について